資産とその価値 一歩くわしく
有価証券ゆうかしょうけん
株式や債券など、投資のために持つもの
ひとことでいうと
有価証券は、株式や債券など、出資したりお金を貸したりした人の権利を表すものです。
同じ株式でも、持つ目的によって扱いが変わる
同じ株式でも、値上がりしたらすぐ売るつもりで持っている場合と、その会社を支配する目的でずっと持ち続ける場合とでは、意味合いがまったく違います。会計でも、有価証券は保有する目的ごとにグループ分けし、それぞれ違う評価方法を使います。
何のために持つかで、扱いが分かれる
株式は会社に出資した人の権利、債券は国や会社などにお金を貸した人の権利を表します。同じ株式や債券でも、何のために持っているかで、決算書に載せる金額の計算方法が変わります。
第10号第15〜18項では、主に4つに分けます。①短期の値動きで利益を得る「売買目的有価証券」。②返済の日まで持つ「満期保有目的の債券」。③相手の会社の経営を決めたり、大きな影響を与えたりする関係にある「子会社株式・関連会社株式」。④それ以外の「その他有価証券」です。
区分ごとに、評価方法が違う
売買目的有価証券は、決算のたびに時価で評価し直し、時価と帳簿価額の差額(評価差額)をその期の損益として計上します(第15項)。満期保有目的の債券と子会社株式及び関連会社株式は、原則として取得原価のまま貸借対照表に載せます(第16項・第17項)。その他有価証券は時価で評価しますが、評価差額の処理方法には2つの選択肢があります(第18項)。評価差額の合計額を純資産の部に計上する方法(全部純資産直入法)と、時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は純資産の部に計上し、下回る銘柄の評価差額はその期の損失として計上する方法(部分純資産直入法)です。いずれの方法でも、純資産の部に計上する評価差額には税効果会計を適用します。ただし、市場価格のない株式は時価を把握できないため、その他有価証券に区分されていても取得原価のまま貸借対照表に載せます(第19項)。
食品会社の売買目的有価証券を計算してみる
図2は、食品会社が余った資金で、短期的な時価の変動をとらえて売買を繰り返す目的で上場株式を10万円分買った例です。短期的な時価の変動により利益を得ることを目的にしているため、この株式は売買目的有価証券に区分されます。決算日にこの株式の時価が12万円になっていた場合、帳簿価額を12万円に書き直し、差額の2万円を有価証券運用益として当期の利益に計上します。
もし食品会社がこの株式を「値上がりしても売らず、ずっと持ち続けるつもり」で買っていれば、子会社株式のような特別な関係がない限り、その他有価証券に区分されます。この場合、値上がり益であれば評価差額は損益ではなく純資産の部に計上される点が異なります(値下がりの場合は、採用する方法によって当期の損失として計上することもあります)。
表示区分:流動資産か、投資その他の資産か
有価証券のうち、売買目的有価証券と、一年内に満期が来る社債などは流動資産に表示します。それ以外の有価証券は、投資その他の資産として固定資産に表示します(第23項)。持つ目的が変わると、評価方法だけでなく、貸借対照表上の分類も変わることになります。
仕訳で確かめる
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
| 売買目的有価証券 | 20,000 | 有価証券運用益 | 20,000 |
ここまでのおさらい
株式や債券は、「何のために持つか」で決算書への載せ方が変わります。値動きの差をそのまま利益にするものもあれば、利益とは分けて記録するものもあります。
出典と確認状況
説明の範囲
日本基準の入門解説。企業会計基準第10号にもとづく有価証券の4つの保有目的区分と評価方法の基本を扱う。ヘッジ会計、複合金融商品の詳細は対象外。
- 企業会計基準委員会:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15項〜第18項:有価証券の保有目的区分と評価方法、第23項:表示区分
公開対象判定:独立レビュー通過・所有者による公開承認済み
食品会社の金額・時価は説明用の仮定です。実際の株価変動、税効果会計の詳細な処理、ヘッジ会計の適用は未判定です。
一般的な学習のための説明です。個別の会計処理は、適用する基準と契約・取引の事情に合わせて判断してください。